ニュースレビュー:日系x Techの「共創十番勝負」NRIの試みを読んで

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大手ITベンダー各社の新規事業の試みを「極言暴論」の木村岳史が辛口に斬る「共創十番勝負


日系XTechという雑誌も、こういう特集を組んでいることも知らなかった。SIerが生き残りをかけて共創に取り組んでいる、非常にタイムリーなテーマだ。今後、クラウドと技術のオープン化によってどんどんSIはなくなっていき、お客様は自分たちでクラウドを使って、自前のディベロッパーでアジャイルなサービス構築をしていくようになるだろう。

そうなっていくのは5年先か、もう少しか、なんて言われている。一方で富士通は2025年くらいまではまだまだSIの時代だ、と豪語しているようだ。それまでに、御用聞きのSIから一歩進んだ、共創サービスの型と実績づくりをしていきたいのが、富士通含め、各社SIerだ。

リンクの本題に入ると、
NRIはコンサルとSI、サービスと様々なITサービスを提供している会社だ。中でも富士通やNECなどと大きく違うのはコンサルティングに強いことでしょう。SIのコンサルティングだけでなく、セキュリティや経営コンサルティングに長けているといえる。

そんなNRIもSIは主力ビジネスのひとつであり、コンサル部隊と、SIソリューション部隊で、2大事業をしている。そのSIがまずいとあっては、コンサルと合わせていかに共創を進めていくかだろう。

NRIが共創の事例ありと紹介しているのは、2016年のJALとの実績だそうだ。

「どこかにマイル」

というサービスをJALとNRIのコンサル・SI混合部隊で、共創によって生み出したとのこと。

これは、2017年の日経優秀製品・サービス賞も受賞しているとのこと。

規模としては小さいみたいだが、NRIはこれぞ共創だとして、担いでいる様子だ。

「どこかにマイル」とは、JALの顧客がためたマイルを「どこか」に往復できる特典航空券と交換できるマイレージ交換プログラム「どこかにマイル」の画面。JALによるとサービス開始以来、約6万人(2017年12月現在)に利用されたそうだ。

お客様のシステム部門から、革新的なサービスを生み出したいと、NRIに声がかかって、コンサル部隊が考え出すところからこの共創は始まったようだ。次第に、SIソリューション部隊の人間のうち、本サービスに必要なデータサイエンティストの人材などを一本釣りでアサインして、混合部隊で、サービスの骨子や、プロトを作って、商品づくりを進めたそうだ。アイデアはNRIが出して、サービス企画のような見せ方にこだわって提案とディスカッションを繰り返したそうだ。

そして、極めつけは、料金の取り方だ。
料金についてもシステム開発費ではなく、自らリスクを取る成果報酬型とした。
これは共同事業のようなもので、一歩間違えば大きなリスクだ。

これを共創事例と呼ぶのは否定しないが、なんともエクストリームな事例だと私は考える。

ここでいう共創の要件とは以下のようなものを並べているように見える

(1)お客様と対等で新しい企画を共に考えること
(2)コンサル・企画・開発の混合チームで当たること
(3)アジャイル開発手法を用いて素早く構築したこと
(4)お金の取り方が従来のSIの人月計算でないこと

かっこいい事例で、上の進め方でリスクが低ければよいのだが、共創でよくあり勝ちなのは、案件としては小さいことだ。従来のSIのような1年、2年の長期的なプロジェクトなどではなく、さっと企画してさっとアジャイルに作ってメンテナンスしていくようなものが多い。すべてとは言わないが、規模がでかいものはアジャイルにそもそも向いていない。すなわち、儲からない。

本件でもNRIが本来やるような規模じゃない、小さな案件だったと書かれている。

それではどこで元を取るのか?(4)にあるような、成果報酬型などの稼働した分でもらうのか?メンテナンスや改修で稼ぐのか?どちらも不安定でリスクをとる稼ぎ方だ。むしろ、今後はリスクをもてということだろうか。

共創サービスへのシフトは基本的にはポジティブなシフトと考えてもいいと思うが、その実としては、ITベンダ、SIerが、ユーザーと共同事業を営んでいくというスタイルなのかもしれない。合弁会社には至らないわけだが、今後はSIをどこどこが受託、ではなく、このサービスはA社と共創して生み出した、あちらのサービスは、B社と共創して生み出した、という時代が来るのかもしれない。


ただ、ひとつだけ違和感があるので言わせてほしい。

これは日本だけだ。

グローバルは、顧客はすでに自分たちでディベロッパーを雇い、システムやサービスを構築している。コンサルティングや、プログラムの下請けなどは効率的にやっているが、SIerを雇うようなことはアメリカなど海外ではほとんど行われていない。日本も本来はそう進化していかないといけないし、最終的には日本もこの渦に巻き込まれる。

だが、一足飛びでそこには行けないし、行かせたくないのがSIerだ。

そう、つまり共創とは、そこに行くまでの道を少しでも遅くするためのSIerの苦肉の策なのだ。

そう考えると、

面白い

日本のガラパゴス化はとまらん。

以上



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